-
NAFLD/NASHとCK-18Fについて (再生時間 16:51)
※本コンテンツの著作権は当社に帰属します。コンテンツの一部および全てについて、当社の事前の許諾なく無断で複製、複写、転載、転用などの二次利用を禁じます。
-
肝疾患について (再生時間 1:27)
-
NAFLD/NASHの概要 (再生時間 4:52)
-
アポトーシス/CK-18とは (再生時間 2:00)
-
本キットの概要 (再生時間 1:30)
-
本キットの有用性・臨床試験結果、
本検査の臨床的意義 (再生時間 5:40) -
本検査の保険点数 (再生時間 1:14)
目次
- 1. 「イムニス® サイトケラチン18F EIA」について
- 2. NAFLD/NASHとは
- 3. 本キット・検査の位置づけ
- 4. 本キットの臨床性能について
- 5. 本キットの原理について
- 6. 本キットの概要(電子添文ダウンロード)
- 7. 保険収載情報
- 8. よくあるご質問
- 9. 資料請求
1.「イムニス® サイトケラチン18F EIA」について
サイトケラチン18フラグメント(CK-18F)はアポトーシスと関連するマーカーで1)、本キットを使用した試験において、
非アルコール性脂肪肝NAFLと比較して、非アルコール性脂肪肝炎NASHで高値となることが示されています2)。
「イムニス® サイトケラチン18F EIA」は血清中のCK-18Fを測定する酵素免疫測定法(ELISA)を原理とする試薬で、
線維化指標と組み合わせることによって、NASH診断の補助として使用します。本キットによって、
非侵襲的で簡便に肝生検を必要とするNASHを絞り込むことが可能になると期待されます。
本キットは、2021年7月29日付で厚生労働省から、NASH診断の補助を使用目的とした体外診断用医薬品として製造販売承認され、
2024年1月1日から保険適用されました。2024年2月末から検査が開始されています。
1) Leers MPG, et al: Immunocytochemical detection and mapping of a cytokeratin 18 neo-epitope exposed during early apoptosis. J Pathol 187: 567-572, 1999.
2) Tada T, et al: Predictive value of cytokeratin-18 fragment levels for diagnosing steatohepatitis in patients with nonalcoholic fatty liver disease European Journal of Gastroenterology & Hepatology Jul 30, 2021. (in printing ) [https://journals.lww.com/eurojgh/Abstract/9000/
Predictive_value_of_cytokeratin_18_fragment_levels.97169.aspx#]
●サイトケラチン18フラグメント(CK-18F)とは
CK-18Fは、傷害を受けた肝細胞でアポトーシスが生じた結果、血液中に放出されることが知られています。
(図:肝細胞アポトーシスでカスパーゼによって切断されたCK-18Fの模式図)
2.NAFLD/NASHとは
●NASH(非アルコール性脂肪肝炎)とは
NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)は主にメタボリックシンドロームを有し、脂肪肝を認めた病態です。
NAFLDは、病態がほとんど進行しないNAFL(非アルコール性脂肪肝)と、進行性で肝硬変や肝がんの発症母地となるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に分類されます。
NASHは、病理学的には、脂肪化に加え、炎症、風船様変性、線維化が認められます。NASH鑑別診断には肝生検が必須です。
しかし、費用が高く、侵襲性などの点から、NAFLD全症例に肝生検を施行することは非現実的で、肝生検対象患者さんの絞り込みが必要です。
●At risk NASHとは
NAFLDで線維化が進展すると、肝硬変、肝癌の危険性が高くなるため、線維化指標で確認します。
線維化指標によって高度線維化を判断できますが、中等度線維化F2を見逃す危険性があります。
近年、進行が早い「At risk NASH」については早期に治療介入が必要とされています。「At risk NASH」とは、中等度線維化F2以上に加え、および脂肪化、炎症、風船様変性の程度指標である
NAFLD活動性スコア(NAS) 4点以上のNASH(NASH +NAS≥4+F≥2)です。
3.本キット・検査の位置づけ
●CK-18F(サイトケラチン18フラグメント)のNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)診断アルゴリズム
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の疑いがある場合には肝臓専門医への紹介が必要です。
FIB-4 indexとCK-18Fを組み合わせた2ステップ診断アルゴリズムが提唱されました。
1st stepとしては簡便に計算できるFIB-4 indexを測定し、2.67 未満の例では、2nd stepとしてCK-18Fを測定します。
CK-18Fが260 U/L以上であれば肝臓専門医へ紹介、260 U/L未満であれば経過を観察します。
<FIB-4 indexの計算式>
FIB-4 index(フィブフォー・インデックス) とは、肝線維化リスクを予測するスコアです。
年齢と血液生化学的検査データであるALT、AST、血小板数4項目を組み合わせて計算します。
FIB-4 Index = [年齢(歳)]×[AST (IU/L)]/([血小板数(x109/L)]※×√[ALT (U/L)])
※109/L:0.1万/µL
<スコア>
1.3未満 … 線維化低リスク|経過観察
1.3~2.67未満 … 線維化中リスク|線維化が進行している可能性があります。
2.67以上 … 線維化高リスク|線維化が高度に進行している可能性があります
FIB-4 indexは日本肝臓学会ホームページ「FIB-4index計算サイト」より計算することができます。
https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/medicalinfo/eapharma.html
●CK-18Fの臨床上の位置付け
線維化低・中リスクでもNASHリスクの高い患者さんを検査によって予測し、侵襲性の高い肝生検が必要な患者さんを確度よく判断するため、CK-18F検査の活用が期待されます。赤枠部分がCK-18F検査でNASHの可能性が疑われますので、線維化リスクが低くてもCK-18Fが高値の場合には専門医へのご紹介の検討をお奨めします。
4.本キットの臨床性能について
●CK-18F(サイトケラチン18フラグメント)の有用性・臨床性能性試験結果:病理組織診断との比較
CK-18FはNAFLよりもNASHで有意に高値でした。
CK-18Fは風船様変化、NAS進展に伴い、有意に上昇しました。
[本キットの製造販売承認申請書類(社内資料)から引用]
●組織診断とCK-18Fの相関
イムニス® サイトケラチン18F EIAの臨床性能試験において、偽陽性に対する偽陰性の重み付けを5.71、有病率0.25 と重みづけ設定をしてROC 解析を行ったところ、CK-18FのROC曲線下面積は0.774であり、カットオフ値を260 U/Lとした場合の組織診断のとき、感度82.7%、特異度57.4%、診断効率76.4%でした。
[本キットの製造販売承認申請書類(社内資料)から引用]
●CK-18F有用性・臨床性能性試験結果:線維化指標との組み合わせ
線維化指標の一つであるFIB4 index単独判定より、CK-18Fとの組み合わせで、NASHの拾い上げ率(感度)が向上しました。また、その他の線維化指標または肝機能指標単独より、CK-18Fとの組み合わせで、NASHの拾い上げ率(感度)が向上しました。
[本キットの製造販売承認申請書類(社内資料)から引用]
5.本キットの原理について
●イムニス® サイトケラチン18F EIAの測定原理
本キットの測定原理は、酵素免疫測定法(ELISA)です。
抗CK-18(サイトケラチン18)抗体固相プレートにCK-18F(サイトケラチン18フラグメント)を含む検体を加え、
さらにカスパーゼによってCK-18が切断されて露出したCK-18F部分を特異的に認識する標識抗CK-18フラグメント抗体を添加すると、
固相化抗CK-18 抗体/ CK-18F/酵素標識抗CK-18F抗体のサンドイッチ免疫複合体が形成されます(1次反応)。
洗浄後、酵素基質を添加すると、検体中のCK-18F量に応じて呈色反応が進行します(酵素反応)。
反応停止後吸光度を測定し、標準液で作成した検量線から血清検体中のCK-18Fの濃度を求めます。
6.本キットの概要
販売名 | イムニス® サイトケラチン18F EIA |
一般的名称 | サイトケラチン18フラグメントキット |
使用目的 | 血清中のヒトサイトケラチン18フラグメント(CK-18F)の測定 (非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)診断の補助) |
製造販売承認番号 | 30300EZX00064000 |
承認日 | 令和3年7月29日 |
1.
CK-18抗体固相プレート(8ウェル×12)(抗CK-18マウスモノクロナール抗体) … 1枚
2.
標準液1 (0U/L・白色) … 1.5mL×1本
標準液2 (125U/L・緑色) … 0.25mL×1本
標準液3 (250U/L・青色) … 0.25mL×1本
標準液4 (500U/L・黄色) … 0.25mL×1本
標準液5 (1000U/L・赤色) … 0.25mL×1本
標準液6 (2000U/L・橙/茶色) … 0.25mL×1本
3.
酵素標識抗体原液(ペルオキシダーゼ標識抗CK-18Fマウスモノクローナル抗体) … 0.5mL×1本
4.
標識抗体希釈液 … 11mL×1本
5.
酵素基質液(3, 3’, 5, 5’-テトラメチルベンチジン(TMB)) … 12mL×1本
6.
反応停止液(4.9%(0.5M)硫酸) … 7mL×1本
7.
洗浄原液(20倍濃縮液) … 50mL×1本
付属品:プレートシール … 2枚
7.保険収載情報
CK-18F(サイトケラチン18フラグメント)の検査については、2024年1月1日に保険収載されました。
測定項目
サイトケラチン18フラグメント(CK-18F)
測定方法
酵素免疫測定法(定量)
保険点数
検体検査実施料
194点
診療報酬区分
D007-50
Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体、マロンジアルデヒド修飾LDL(MDA –LDL) 、オートタキシン、サイトケラチン18フラグメント(CK-18F)、ELFスコア
留意事項
●サイトケラチン18フラグメント(CK-18F)
ア.「50」のサイトケラチン18フラグメント(CK-18F)は、1ステップサンドイッチ法を用いた酵素免疫測定法により、非アルコール性脂肪肝疾患の患者(疑われる患者を含む。)に対して、非アルコール性脂肪性肝炎の診断補助を目的として、実施した場合に算定する。
イ.本検査と「36」のⅣ型コラーゲン、「39」のプロコラーゲン-Ⅲ-ペプチド(P-Ⅲ-P)「42」のⅣ型コラーゲン・7S、「46」のヒアルロン酸、「50」のMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体又は「50」のオートタキシンを併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
●ELFスコア
ウ.本検査と「36」のⅣ型コラーゲン、「42」のⅣ型コラーゲン・7S、「50」のMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体、「50」のオートタキシン又は「50」のサイトケラチン18フラグメント(CK-18F)を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
検体検査判断料
D026-4 生化学的検査(I)判断料 144点
保険適用年月日
2024年1月1日
8.よくあるご質問
1.病態疫学
NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)は主にメタボリックシンドロームを有し、脂肪肝を認めた病態です。NAFLDは、病態がほとんど進行しないNAFL(非アルコール性脂肪肝)と、進行性で肝硬変や肝がんの発症母地となるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に分類されます。
NASHは、病理学的には、脂肪化に加え、炎症、風船様変性、線維化が認められます。
MASLDとは「metabolic dysfunction associated steatotic liver disease(MASLD)」のことです。2023年米国肝臓学会、欧州肝臓学会、ラテンアメリカ肝臓学会が中心になりこれまでのNAFLD/NASHの定義が変更されました。まず、脂肪性肝疾患を「steatotic liver disease(SLD)」と定義することになりました。従来のNAFLD、NASHはメタボリック症候群の基準の一部を満たす場合、「metabolic dysfunction associated steatotic liver disease(MASLD)」、「metabolic dysfunction associated steatohepatitis(MASH)」と診断することになりました。また、アルコール性肝疾患は「alcohol-associated (alcohol-related) liver disease(ALD)」、飲酒量がアルコール性肝疾患とNAFLDの中間でメタボリック症候群の基準の一部を満たす場合は「MetALD」、NAFLDでメタボリック症候群の基準のいずれも満たさない場合は「cryptogenic SLD」、薬物性、Wilson病などに起因する場合は「specific aetiology SLD」と診断されます。
成人の4人に1人(25%)がNAFLDに罹患するとされています。NAFLDの約25%がNASHに罹患し、そのうち25%程度が肝硬変に進行します。さらに、NASH肝硬変は10年で25%前後に発癌を認めます。よって、NAFLD 100人のうち肝硬変に至るのは6~7人で、最終的に肝臓がんに至るのは1~2人程度と推定できます。
[角田圭雄: 明日の臨床 31: 1-12, 2019]
2.CK-18F
[Weng YR, et al: Mol Cancer Res 10: 485-493, 2012.]
3.検査の利用方法
まず、1st stepとして線維化マーカーを測定します。例えば、FIB-4 indexは一般の血液の生化学検査結果(年齢、AST、ALT、血小板)から計算できます。
FIB-4 index =(年齢(歳)× AST(IU/L))/血小板数(109/L)※ ×√ALT(IU/L)) ※ 血小板数 109/L: 0.1万/μL
FIB-4 indexが2.67以上の場合は、NASHの可能性が高いので肝臓専門医に紹介します。FIB-4 index 2.67未満の場合は、2nd stepとしてCK-18Fを測定します。CK-18Fが260 U/L以上であればNASHの可能性が高いとして肝臓専門医へ紹介、260 U/L未満であれば経過観察します。
また、血清中におけるCK-18Fと各線維化マーカー(FIB4 index、Ⅳ型コラーゲン・7S、Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)の相関係数は「弱い相関」かあるいは「相関がない」ことから、CK-18Fと線維化マーカーを相補的に組み合わせて使用することができます。
4.本キットについて
①感度試験 標準液0 U/Lと標準液125 U/Lを3回測定するとき、125 U/Lにおける吸光度の平均値-2SDは0 U/Lにおける吸光度の平均値+2SD以上です。
②正確性試験 管理用検体 L、M、H を3回測定するとき、CK-18F測定値の平均値はいずれも既知濃度の±20%以内です。
③同時再現性試験 管理用検体L、Hを3回同時に測定するとき、CK-18F測定値のCV値はそれぞれ10%以下です。
④測定範囲(例示)
自社標準品の場合の測定範囲は35 U/L~2000 U/Lです。
5.検体について
検体を保存する場合は、4℃で1週間以内としてください。
長期間保存する場合は、-80℃で保存して下さい。弊社における検討で、検体は-80℃で2年間安定であることを確認しています。
6.保険収載
測定方法:酵素免疫測定法(定量)
主な使用目的:血清中のヒトサイトケラチン18フラグメント(CK-18F)濃度の測定(非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断の補助)
保険点数:194点
準用診療報酬区分:D007-48 Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体、マロンジアルデヒド修飾LDL (MDA -LDL) 、オートタキシン
検体検査判断料:D026-4 生化学的検査(Ⅰ)判断料 144点
9.資料請求
-
製品概要(12P)
A4 -
製品リーフレット(4P)
A4 -
臨床性能試験結果報告書
A4 -
脂肪肝ノート
B5